バルセロナの街をぶらぶらしていたとき、エレベータの鏡だかショーウインドウのガラスだかに不意映って現れたぼくら。だから何だ？という話なんだけど、照明の感じとか合わせ鏡になった感じとかで「ここではないどこか」感があった。こういうのを写真に撮ったり覚えてる感覚が旅先あるあるで、なんとなく絵に描いた。

ほんとはもはや場所も時期も曖昧で、バルセロナだったのかどうかもうろ覚え。でも不意に今でもこの瞬間のことを思い出したりする。もしかしたらそれさえも脚色なのかもしれない。

人の記憶は曖昧だ。誇張されたり都合の悪いことは忘れてしまったり。でも、そういう記憶こそが旅の記憶であり、その人にとってのリアルなんだと思う。

ぼくなどは、こんな曖昧な虚像かもしれないような断片を、なぜか大切に思ってて、絵まで描いてしまった。もとになった写真の前後の写真を見れば、そこがどこかわかるのに、それをあえてしない。

時間がたつと、すべて忘れてしまうから、思い出を、カタチとか文字に残しちゃうような感覚こそ人間臭さだと思う。

とくにオチのない話ですません。

2023.12